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アイルーン

「失われた王子」

年齢: 21

外観の特徴: 灰色の髪、赤い目、鍛えられた肉体を持つ。 
戦闘中は悪魔の王子が所有する黒い鎧を身に纏っている
が、それ以外の時は変装していることが多い

能力: フェンシング、決闘、弁論術、演技、哲学知識

魔法: 炎系

性格: 機転がきく。刃のごとく鋭い剣士にして魔法も操る。高貴な生まれであるが、デモスカス族の自由の大義のために反政府組織アーニンのメンバーとなる。首領のカリーナのことを妹のように思っているが、カリーナは、そのことには不満でボスとして振る舞いたがっている。

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Back Story

失われた王子の異名を持つアイルーンは、真鍮の都市スーラジに君臨する悪魔の王、ラクターの末の息子です。
王子たちの中で最年少の彼は父の宮廷で責任のある役職につくことをまったく期待されずに育ったため、演劇、フェンシング、哲学といった軽薄な趣味を自由に追求することができました。
彼は特に演劇を好んでいました。また自分の長所を誇張しすぎるきらいはありましたが、熱心な生徒であり教師たちに愛されていました。
アイルーンは弁論術において、まだ十代のうちに熟練した討論者となりました。その道の達人に挑んでは最初の弁論が終わる前に負けてしまったことも一度や二度ではありませんでしたが…
そうした敗北にもめげずに、彼はこれらの経験から学んでこの古典的な科目の尊敬される学生となったのです。やがて彼はスーラジの芸術家たちや知識人たちの間でも、その名を知られるまでに上達しました。贅沢を好む貴族趣味を持った若者ではなくて、彼の出身階級を考慮すると、興味深い考えを持った魅力的な若者へと成長しました。
その一方で彼の父親はあまり彼に満足していませんでした。子供じみた趣味に興じたり、悪魔の皇子でありながら政治に抗議していることに矛盾はないのだろうか?と。
悪魔の王ラクターは最終的にアイルーンの自由を厳しく制限し、スポーツのようなフェンシングではなく実戦的な武術を、役に立たない哲学ではなく現実に即した政治的事柄を学ぶように命じました。
アイルーンは不満に思いましたが、それでも領主の息子としての義務を自覚していたので、これらの新しい主題にも彼なりに最善の努力をかたむけて学びました。
ただ、依然として公開討論会への出席やアクロバティックなフェンシングの試合への出場を諦めることが出来ませんでした...
それで、父親が国務に追われて忙しいときには時々、父親の目を盗んでは、酔ったふりをして夜中に数時間だけ自分の愛する世界へと戻り、そして必ず夜明け前には戻って来るようにしていました。
ある夜のこと、アイルーンは下品な茶屋に招待されました。そこでは放浪の一座があらゆる種類のとんでもない劇を上演しているという評判でした。アイルーンは変装していたので中に入っても、誰にも気づかれる心配はありません。それでこの一座の何がそれほどスキャンダラスなのだろうかと興味を持って、じっくりと劇を眺めていました。
頭に角のように棒を2本付けて、ベルトにも空き瓶を数本付けた俳優が赤い豚の着ぐるみを着て舞台に立っていました。
彼は派手な化粧をし露出度の高い服を着た美しい若い女性を連れています。
「閣下!」
彼女は甲高い声でこう言いました。
「近々アグニ大使と会う予定です。」
「それならワインが必要だ、そして甘いものも必要だ」
豚男はうなり声を上げました。 そして
「私があなたにお金を払っているのは、会話を楽しむためではないのだ。美しい姿を見せてもらうためにお金を払っているのだから、私が怒りだす前に準備をしてください!」
豚男は鼻を鳴らすと、興奮のあまり苦しそうにハァハァと息を吐きながら床に敷かれた敷物の上で気を失いました。
すると汚れた宮殿を描いた背景画がバックステージに降りてきて、若い女性はちょっとした歌を歌いました。
「貴族たちは私たちを盲目的に奪っています!なんてこった!敵が背後から襲いかかる!なんてこった!
今度は誰が私たちを守ってくれるでしょうか?WHO?領主とワインのボトル!ブーブー」
観客は爆笑していましたが、アイルーンの心は沈み深い憂鬱に包まれました。俳優たちは他でもない彼の父親、スラージの魔王についてこのような嘘を歌っていたのです!
アイルーンが父親とどんなに意見が合わないとしても、彼はそれを受け入れることが出来ませんでした。
どうして俳優たちはこれほど公然と法を無視しながら、それを誇示することができるでしょうか?
アイルーンが激しい抗議の言葉を口にし始めようとしたとき、彼は何者かに口を手で力強く覆われるのを感じました。
「しーっ、王子様!今、正体を明かしたら彼らの人生だけではなくて、あなたの人生も台無しにしてしまいますよ。あなたのご家族のことを誰もが嫌っているこの場所で、本当の自分をさらけ出したいのですか?」
女の声が耳元でささきました。
「王子様ですって⁉︎ どういう意味ですか?私はただの…あなたは一体何者ですか?私は...」
アイルーンは答えようとしましたが、女の手で口をふさがれてそれ以上声を上げることはできませんでした。
「私はあなたの救世主であり、誘拐犯でもあります。あなたをここから救い出します!そして今すぐにでも天国に連れていってさしあげます」
今度はさらに強い口調で、女は再びささやくと手首を軽く叩いてアイルーンの手を縛りました。
「私について来て、王子様。そうすれば生き残れるかも知れません。」
アイルーンはこの女性が誰なのか、何も知ることがありませんでした。強い口調だが、声は若いということ以外は。
彼は、このような奇妙な状況ではあまり考えずに、とにかく行動することが大切だと思い素直に彼女に従いました。
女性は彼を外の馬車のところまでに連れ出しました。ようやくアイルーンには女が劇場の舞台にいた人だということが分かりました。
「ちょっと待てよ……君はあのスキャンダラスな一座の一員だ!私の父について中傷を広めるて恥じることはないのですか!」
「落ち着いてください、王子様。そうでないとあなたに猿ぐつわをしなければなりません...それに、あなたのお父さんについて、いくつか知らないことを学ぶのも面白いかもしれません...」
それから何年も経ちました。しかし今日に至るまでアイルーンは宮殿に戻っていません。
問題の謎の一座は最近はスラージの町ではあまり公演を行っていないようだ。ただ近頃、人気の高い新しい俳優を獲得したとの評判だ。
また彼らは本物の劇団ではなく、その正体はデモスカス族の全ての富裕層、貴族の敵である「邪悪なアーニン」ではないかとこっそり噂をする人々さえいるとのことだ…

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